インタビュー:キャリア再開、職場復帰をサポートする日本マイクロソフト「リターンシッププログラム」への取り組み(前編)

インタビュー:キャリア再開、職場復帰をサポートする日本マイクロソフト「リターンシッププログラム」への取り組み(前編)
by 戸田江里子 公開日:2019/11/26 / 最終更新日:2019/12/12
▲日本マイクロソフト株式会社(左から)市坂 昌平さん、大渡 郁佳さん

出産や育児、介護、家族の転勤等々、個人の事情により一度キャリアを中断・離職を経験した人にとって、キャリアの再開や職場復帰には、意欲はあっても不安も多いかと思います。特に「Happyデジタル」読者にとって、各種テクノロジーの進化にキャッチアップできるのかは最も気になるところ。

日本マイクロソフトでは2018年から、キャリア再開・職場復帰をサポートする「リターンシッププログラム」を実施しています。これは正社員就業を前提とした準備期間として、3~6カ月間の有給インターンシップに参加、終了後は日本マイクロソフト、および他企業の正社員としての就業も検討できる「いつでも仕事に戻れる環境の整備」を目指す社会貢献プログラムです。

前編は「リターンシッププログラム」のご担当者である人事本部の大渡さんと市坂さんに、後編は現在、同社で正社員として活躍する「リターンシッププログラム」修了生の瀬戸さんへのインタビューをお届けします。

後編のインタビューはこちら

前編インタビュー

日本マイクロソフト株式会社
人事本部採用チームマネージャー 大渡 郁佳 氏
人事本部ビジネスマネージャー 市坂 昌平 氏

キャリア再開を躊躇している人に背中を押せるようなプログラムでありたい

Happyデジタル:

会社として「リターンシッププログラム」がスタートしたきっかけは?

日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト):

何かしらの事情でキャリアを中断せざるを得なくなった方々が、もう一度その社会に復帰する為の階段がものすごく今、高くなってしまっている現状があると思います。復帰のためのサポートを会社として何かできないかというのが、プログラムを始めたきっかけです。そのため会社としては幅広く多くの可能性がある方々、そしてキャリアを中断してしまったことで社会に戻ることに二の足を踏んでしまっていたり、ちょっと勇気が出ないけれどもチャレンジをしたいと思っているような方々の背中を押せるようなプログラムでありたいと考えています。

Happyデジタル:

インターン受け入れにあたって重要視していることは?

マイクロソフト:

とても大切なのは社内のコンセンサスです。社内の各マネージャー達が受け入れたインターン人材に対して、期待値をきちんとクリアに設定することが大切です。たとえばインターン期間にやってもらうこと、どういうことができたら次のステップに進むか、そして正社員としてのポジションにチャレンジしてもらう等の期待値を明確にすること、これが重要です。ただこれはどこかに答えがあるわけではありません。あるAというチームが始めたことがそのままBのチームにも当てはまるわけではないのです。私たち人事側では、どのチームがインターン候補者の可能性を引き出せるか、その方が実際に就業し始めた時にどういった形でスキルを発揮してもらえるかというフォローアップも含めて、現場のマネージャーときちんと相談しながら進めていくということがすごく重要かなと思います。

Happyデジタル:

受け入れる現場、人事の労力が大きい気がするのですが。

マイクロソフト:

学生インターン、新卒社員、経験者で中途採用入社した方、いずれの社員にも何らかの新しいインプットが必要になります。「リターンシッププログラム」のインターンもそれと同じです。キャリアのギャップがあるところの埋め方や、何から任せて次にどういうステップアップを踏むのか、というところをきちんとマネージャーが自分でコミットをして、人を育てるという心を決めて実行しているからこそ、結果が出てきているのかなと思います。

日本でのマイクロソフトの歴史は他の会社さんと比べて浅いですし、特に会社として大きくなったのは2000年に入ってからです。そのあたりから中途採用が増えました。弊社のチームの構成としては約90%が他の会社を経験した方が入社してきています。私たち自身もそうです。それぞれのキャリアステージや経験年数に応じたプログラムをマネージャーが準備し、実践しています。そういう意味では、途中からチームに誰かが入ってくるというのはとても自然なこととして受け入れられます。

他企業との連携で多様な提案を

Happyデジタル:

どういったスキルの方がプログラムに適合すると思われますか?

マイクロソフト:

たとえば技術的なバックグラウンドがあり、エンジニアとしてお仕事されていたというような方々であれば、その基礎の上に、日本マイクロソフトが今お客様から求められている最先端の技術に関しては勉強していただく必要があります。そのため最先端技術をキャッチアップする意欲や、その勘所がある方がインターン、そして正社員としてもうまくフィットしているケースが多いですね。

Happyデジタル:

応募側にとって、自身の持っているスキルで応募しても良いのかと思う人も多いと思うのですが、何か事前にガイドラインの提示などはありますか?

マイクロソフト:

募集職種や簡単な仕事内容は出させていただきます。弊社が主催するリターンシッププログラム説明会や人事との個別面談を通して、求める経験や人物像など実際にご確認いただき、「これだったら頑張れるかも」という方に多くご応募いただいているというのが今までの形かなと思います。

「リターンシッププログラム」は2018年の1月からスタートして、4半期に1回説明会を実施しています。今までで6回実施しています。6回とも若干募集職種は違ったりしていますが、会社の事業自体は変わっているわけではないので、エンジニアなどは毎回募集をしていますし、時期によってマーケティングやセールス部署が加わったりすることがあります。

前回からは弊社に加えて、このプログラムの趣旨に賛同いただける他の企業様にも連携していただくことになりました。弊社の人事本部長である杉田はこのプログラムに関して非常に社会的意義を感じていまして、他の企業様とお目にかかった際に紹介することで、興味を持っていただきました。連携いただく企業様が増えると、職種の選択肢やプログラムの内容が広がり、キャリア再開を考えている方々に多様な提案できるようになります。そういう意味でも、他社様と連携することは非常に社会的貢献に寄与するものと考えています。

▲「最先端技術をキャッチアップする意欲や、その勘所がある方がフィットしているケースが多いです」と市坂さん

自分の経験がどれだけ次に活かせるか、きちんと自分で語れることが大事

Happyデジタル:

実際にどのような方が応募なさっているのでしょうか。

マイクロソフト:

本当に様々なバッググランドで、経験年数も皆さん違いますし、経験しているスキルも違います。多くの場合は、募集している領域の半分くらいは経験をしていて、半分くらいは未知の領域として新たにポテンシャルとしてチャレンジしてもらうというような方々が多いかなと思います。ブランクの期間や理由も本当に様々です。

そのような中で、「仕事ではこんな実績をあげるんだ」という先を見据えた覚悟を持っていたり、自分が貢献できる範囲をきちんと想像でも構わないので話ができる方は、その先にゴールを置いているので、インターンとして入ってからも成功していると思います。わからないことをきちんとクリアにしながら自分なりに進めていったり、今取り組んでいることが、自分が正社員になったときにどう繋がっていくか考えられる。こういった自分の経験がどれだけ次に活かせるか、きちんと自分で語れる方は正社員になってからもうまく仕事を進めているようです。

技術の進化は目まぐるしいです。それに対応するには学習しようという意欲や、新しいことや未知の領域が「自分は経験が無いから出来ません」ではなくて、「経験は無いけれどもどういう情報を得て、どういう風にやったら出来るようになる」というのを模索するような方が我々にとっては欲しい人材です。

Happyデジタル:

実際にインターンシップから正社員として採用された方がおられるのですね。

マイクロソフト:

これまで6回の説明会を通して、毎回インターンシップを受け入れています。その中ですでに5名が正社員として採用となっています。とても意欲の高い方にインターンに来ていただいて、成果を上げて社員になっているという良い流れ、良い事例ができています。

Happyデジタル:

インターンに応募したが正社員にはならなかった方は自信を無くして辞めたのか、それとももっと違う自分のスキルを活かせる他社を志望されたのかなど、把握されている部分はありますか?

マイクロソフト:

人によると思いますが、日本マイクロソフトでやりたいと思っていたことと、実際に今のチームでやっていることが違ったというケースもあります。あとは技術的スキルの部分でいえば、自分が得意で興味のあったものとお客様の求めるものが違ったということもあります。そこから先またご自身で転職活動や要望、キャリアを叶えられる企業へ応募をされている方ももちろんいらっしゃると思います。

何かしらの形で弊社のビジネスの進め方、チームや仲間との協業であったり、弊社のカルチャーやミッションを理解していただいて、もしそれが次のキャリアのどこかに活かしていただけるのであれば、私たちも大変うれしく思います。

前向きに新しいことも吸収しながら仕事を進める

Happyデジタル:

受け入れた部署のマネージャー、社員の方などはどんな感想をお持ちですか?

マイクロソフト:

ブランクがあるとはいえ、ある分野において即戦力で仕事が出来るという方が多いので、すごくありがたいという意見をもらうことが多いですね。成長志向の方たちを受け入れていますから、マネージャーが何かチャレンジを与えると、それに対して前向きに取り組む人が多いです。新しいことも吸収しながら仕事を進めていますので、十分に仕事の力を発揮してもらっているという意見をもらうことが多いです。

Happyデジタル:

家庭のご事情でお仕事を中断された方も多いと思いますが、その辺でのケア、例えば子供が病気になって仕事が出来ないなどの弊害は?

マイクロソフト:

聞いている限りでは、そこが問題ということはあまりないです。弊社では正社員も小さい子供を育てながら仕事をしている人も多いので、そういうことが問題になる仕組みやカルチャーは社内にはありません。どちらかというとブランクがあることによって自分自身に自信が持てないという方が多いかと思います。インターンシップはそれを乗り越えてもらう、または家族で一緒に解決するための助走期間だと思っています。「なんか少し思い出してきたぞ」「こんな感じだった」「そうか、チームに貢献するってこういうことだ」「チームから情報もらうってこういうことだ」など、現場感を思い出してもらうのがインターン期間であって、それを上手く乗りこなせた方が社員として復帰できたのかなと感じています。

お互いの成功に貢献できるかを考えることに重きを置いている

Happyデジタル:

ブランクのある人がチームに入り、一人で抱え込まないようケアすることもマネージャーさんや会社の方が理解していらっしゃるからストレスなく業務ができるのでしょうか。

マイクロソフト:

ひとりで仕事が成り立つような職種は社内にはほとんどありません。必ず誰かとコラボレーションしたり、誰かを助けて初めてインパクトが出てくるようなことを常に考えています。そういう意味では新卒であれ、中途であれ、インターンであれ、正社員であれ、その人が成功する上で自分が何をすれば良いか常に周りが考えるし、そのためにマネージャーがあなたはこういう事をサポートしてあげてという具体的な指示や助言をしていきます。インターンの人たちだけでは無く、隣にいる正社員の人に対してもどういう風に助け合い、お互いの成功に貢献できるかを考えることについて、会社として重きを置いています。

Happyデジタル:

キャリア中断期間もクラウドソーシングやフリーで仕事をする方が多いようですが、一人で仕事を完成させる厳しさや辛さを感じているようです。リターンシッププログラムは組織のサポートがあるというのがとても大きな利点かと思います。

マイクロソフト:

その通りだと思います。フリーランスを目指したいという方もちろんいると思います。しかし組織としての醍醐味といいますか、ビジネスを一緒に仲間と作り上げていくということに関して興味のある方には、ぜひこのプログラムを活用していただきたいです。

▲「仲間とビジネスを作ることに興味のある方はぜひチャレンジして欲しいです」と大渡さん

Happyデジタル:

これから応募しようと思っている方へメッセージをお願いします。

マイクロソフト:

主に育児や介護でキャリアのブランクがあるという方が中心になるとは思うのですが、今ビジネスはもの凄い勢いで変化しています。おそらく10年前と比べると変化のスピードも世の中のスピードも速くなっています。キャリアの中断を気にするより、これから働く中で、どう学んでいけるかというのが最も大事な事かと考えています。実は私自身(市坂氏)も数ヶ月前に転職して日本マイクロソフトに来たのですが、日々学ぶことだらけです。中断期間の有無はあまり関係無く、会社自体も変わっているところなので、一緒に変わっていくことを楽しんでもらえるのが一番良いと思っています。

今、弊社のビジネスの中心はクラウドにシフトしています。その中でお客様とパートナーシップを組んで、どうお客様の環境をより良くするか、デジタルトランスフォーメーションをどう加速していくかということに注力しています。そのために協力関係や、新しい取り組みを今いる社員たちも学びながら変えたり、作ったりしているところです。すごく有意義なチャンスだと思います。

取材を終えて:

リターンシッププログラムが実現し、成果を上げている背景には、ダイバーシティを尊重する会社の姿勢あってのことだと感じました。性別、バックグラウンド、年齢、国籍など多様な人材が活躍できる門戸を開く取り組みとして、多くの企業で導入してほしいと思いました。

2019年11月23日(土)に「リターンシップ合同説明会」が開催されました。こちらも取材させていtだきましたので、近日、記事を公開予定です。

https://news.microsoft.com/ja-jp/2019/11/12/191112-information/

リターンシッププログラム紹介ビデオ

https://www.youtube.com/watch?v=izorUeBOEYY

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