2020年度からのプログラミング教育必修化。巷でよく耳にするものの、実際に学校でどんな風に授業が行われるのかとなるとイメージしにくいのではないでしょうか。そんな折、都内の小学校でプログラミング学習をテーマにした出張授業があると聞き、去る1月26日(土)に取材へ行ってきました。
身近なテーマでプログラミングを学ぼう
都内にある文京区立関口台町小学校3年生のクラスでプログラミング学習の出張授業が行なわれました。教室に入るとすでにPepperが待機中、まずはあいさつからスタートです。

「Pepperは皆と同じように『語先後礼』ができてたかな?」と切り出したのは講師の西原朱里さん。「語先後礼」とは挨拶をするときに相手の目を見て言葉を言った後にお辞儀をするという意味の言葉で、関口台町小の取り組みの1つなのだそう。

「できてない!」と子どもたち。そう、Pepperは挨拶はできるものの語先後礼までは分からない様子です。そこで「Pepperに語先後礼を教えよう」というのが今回の授業のテーマ。子どもたちにとっても日頃取り組んでいる身近な題材です。

Pepperに教える、とはつまりPepperが分かる言葉を伝えること。さらに西原さんは2つの大切なルールがあると話します。それは
- 伝える順番を守る
- 過不足なく伝える(必要な動作だけ教える)
「いっぺんにたくさんの言葉を言ってもPepperには伝わらないよ」、「手を上げて、だけじゃなくてどのくらいのあげ方、角度なのかも伝えよう」、「余計な情報はいらないよ」など、難しいプログラミング用語を使うことなくしっかり子どもたちにプログラミングの考え方を伝えていきます。日頃、個別指導塾で英語や算数、ロボットプログラミングなども教えていらっしゃるという西原さん、さすが、分かりやすい!
ルールが分かったところでいよいよプログラミング作業開始。皆にタブレットが配られるのかと思いきや…。
パソコンもタブレットも使わないプログラミング学習
用意されたのはプログラミングを行なう画面をコピーしたB4サイズの紙と1つ1つの命令(コマンド)が書かれた紙片が何枚か。あれ? パソコンもタブレットもなくて大丈夫なのでしょうか。

これについて授業終了後、西原さんにお聞きしたところ「事前に学校側とも相談したのですが、パソコンやタブレット操作に慣れていない児童もいる中でプログラミング的な考え方を学習するには紙を使う方がよいのではないか」との考えに至ったとのこと。たしかに基本的な考え方を学ぶ上では、慣れないタブレットの操作に気を取られるより紙の上で考える方が効果的かもしれません。

考えたプログラム(=正しい順番に並べたコマンド)をタブレットに入力し、Pepperに送信するとPepperを動かすことができます。今回は早く紙片を並べたグループが代表してPepperを操作しました。

自分たちで考えたプログラム通りにPepperが動き、子どもたちもとても楽しそう。
今回の授業では、さらに発展させたプログラムの作成にもチャレンジしました。「おはよう」と声をかけるとPepperが「おはよう」と、「こんにちは」と言えば「こんにちは」と反応してくれるというものです。子どもたちでいろいろと考えてみたものの、残念ながらこちらは想定通りにPepperを動かすことはできませんでした。とはいえ、うまくいかなかったという経験も子どもたちにとっては学びの1つになったはず。
また、私たちが目にするPepperの動きはほんの数秒でしたがプログラミングにはその何倍もの時間がかかるということも実体験を通して教えてもらいました。


~授業後、西原さんにお話を伺いました~
ご自身も4人のお子さんを持つママであり、日頃、個別指導塾でさまざまな科目を小中高校生に教えている西原さん。ロボットプログラミングの他、算数の理解への補助教材としてPepperを使うこともあるそうです。今回の出張授業のシナリオは学校と事前に打ち合わせした上で西原さんご自身が考えられたそうで、子どもたちが楽しみながら学べる内容でした。
個別指導塾の講師をなさる一方、日本舞踊教授でもある西原さんには「日本文化のよいところを多くの子どもたちから広く海外に伝えてほしい」という夢も。そのためには未来へと羽ばたく子どもたちに英語力やグローバルな視点も必要とおっしゃいます。今回の出張授業で見せた子どもたちのいきいきとした楽しそうな姿に、学ぶ喜びや新たな視点、感性が生まれるのを感じました。プログラミング学習の本質とはこうしたことなのかもしれません。