著書「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」からストーリー作りのヒントを学ぶ。AStory(エーストーリー)合同会社小西みさをさんインタビュー

著書「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」からストーリー作りのヒントを学ぶ。AStory(エーストーリー)合同会社小西みさをさんインタビュー
by 小野寺いつか 公開日:2020/01/26 / 最終更新日:2020/01/26
AStory合同会社代表/PRストラテジスト小西みさをさん
▲AStory合同会社代表/PRストラテジスト 小西みさをさん

 2019年7月26日に著書「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」を上梓された小西みさをさん。

現在はAStory(エーストーリー)合同会社代表兼PRストラテジストとして、PRコンサルティング、ブランディングを通じて企業のストーリー作りのお手伝いをされています。一体どんな風に取り組まれているのか、著書のお話と合わせてストーリー作りのヒントをおうかがいしました。

当時はまだ無名の外資系企業がここまで大きくなるまでに、広報として取り組んだこと

 私がアマゾンに入社したのは2003年9月でした。その頃のアマゾンはインターネットビジネスに詳しい方々には知られていても、一般にはほとんど知られていませんでした。別のオンラインストアは使ったことはあるけれども、アマゾンなんて使ったことがない、という方が大半だったのです。

もっと分かりやすく言うと、マンションにお住まいだとごみ置場に行くと今では「Amazon.co.jp」と書かれた段ボール箱がいっぱい捨ててありますね。当時は一個も見たことがないくらいアマゾンを誰も使っていない、そんな時期に入社しました。

 私はそれまで複数の企業を含む10年以上の広報経験がありまして、その経験を生かして色々やってみようと意気込んでアマゾンに入社しました。しかしまず苦労したのは、外資系企業ということもあり、公表できる数字がほとんどなかった点です。

例えば売上や利益は勿論ですが、従業員数すらも公表していませんでした。そのためファクトになる情報がないため、説得材料に欠け、規模感などについて理解していただくことが大変困難でした。

そこで数字を使わずにアマゾンの凄さを表現するために、アマゾンのリソースの棚卸をしてみました。つまりアマゾンにどのような強みがあるのか、徹底的に分析したのです。

その時に私が重きを置いたのはサービス、人、組織の3つの要素でした。各側面で見た結果、強みの一つは物流センターでした。

というのも、実はお客様から見るとアマゾンってパソコン画面だけの世界に見えていて、「本当に人間が働いているの?」と冗談で言われたりすることもあるぐらい無味乾燥なイメージでした。そういったお客様が抱いているイメージとのギャップや、アマゾンは日本で本気でやりますよ、という意思表示をするために物流センターはうってつけの切り口だったのです。

 物流センターは非常に大きな雇用機会を生み出していて、多くの人が働いていました。また、アマゾンは「地球上で最も豊富な品揃えを提供する」「地球上で最もお客様を大切にする」ことをビジョンとして謳っていた会社ですので、それを訴求していくという大きな目的がありました。

一方でアマゾンのノウハウが詰まった心臓部でもあるため、メディアを受け入れるのに現場の人たちともかなり喧々諤々しながら調整することになりました。その結果ようやくメディアのみなさんがご覧になれるツアールート、また説明内容を確立しました。

 これをやってみて良かったのは、狙いどおり、アマゾンの品揃えの豊富さが一目瞭然で理解頂けたこと、そして迅速な配送が可能になる秘訣が訴求でき、まさにアマゾンが伝えたかったことが発信できたことです。来られるメディアの方々は「こんな舞台裏だったんだ」とみなさん驚かれました。メディアの方を始めとした社会とコミュニケーションしていくために大事な要素がいくつかあるんですが、その1つが「意外性」なんです。

まさにこの物流センターは意外性の賜物で、そのため数多くの取材機会を増やすことができました。私が対応しただけでも恐らく何百件というくらい物流センターの取材を調整しました。

取ってつけたような話題作りはすぐ見透かされてしまいますが、このように企業のビジョンや事業戦略に合った説得力のある切り口を創造していくことで、メディアの方々に長期的に関心をお持ちいただき、結果信頼関係を構築し、世の中に発信することができます。

この事例以外にもビジネス戦略と広報戦略が一体化して、事業開発のフェーズごとに追い風になるような戦略および戦術を策定しサポートしていくということを継続して実施しました。それがアマゾンという企業が事業開発とともに成長した要因なのかなと思います。

ストーリー作りのために日々社内コミュニケーションで情報収集

 私は自分のことを社内記者だと思っていました。会社のリソースを理解し、棚卸するために常に情報収集に努め、コミュニケーションを取りました。

もちろんトップともよく話をしましたし、本当に様々な部署があったので、自ら積極的に働きかけて情報収集していました。そうすると、あ、こんな面白いリソースがあるんだ、とか、こんな水に詳しい人がいたんだ、毎週何百冊も本を読んでいる人がいるんだ、というような素晴らしいリソースがあることが分かってくるんです。

社内でそのような方々に会っていくと、自分の中でもストーリーを組み立てやすくなりますし、色々な引き出しが増えて、もしかしたらこういうストーリーが作れるかな、と自ら発想することもできます。 社内で情報収集して、かつ、ただ面白おかしければいいというわけではなくて、それがいかに会社のビジネスにとって追い風になるものが作れるかというところに主眼を置いてやっていました。

著書「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」には今回お話いただいたエピソードを始め、ストーリー作りのヒントがちりばめられています
▲著書「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」には今回お話しいただいたエピソードを始め、ストーリー作りのヒントがちりばめられています

ストーリーを作る上で、小西さん自身が日々大事にしていたこと

 情報収集は社内はもちろんですが、当然ながら社外からも行わないと広報の仕事は成り立ちません。広報として社外の情報収集する際には、今社会がどのようなことに関心を持っているのか、もしくはどのような課題を持っているか、という点について収集し、社会の関心と調和できるような切り口を提案する形でストーリー作りをしていました。

最近でいうと働き方改革とかダイバーシティ、テック系でいうとMaaSや5Gですとか、色々なみなさんの関心ごとがありますよね。毎日ありとあらゆる媒体から情報を得るようにはしていましたが、特に新聞を読んでいると共通のキーワードがいっぱい散りばめられているんです。

そういったキーワードを見ながら、それに対して自社が開発している事業とどのような接点があるのか、また解決策になっているのかについて提案してきました。

 幸か不幸か今は溢れんばかりの情報がありますので、情報を取ろうと思えばいくらでも取れます。ただ、やはり精度の高い情報を可能な限り参照することが自分たちにとってもプラスになっていくと思いますので、新聞を中心に情報収集することをおすすめします。

コミュニケーションが苦手な人にもすぐに出来る、ストーリー作りのヒント

 一番大事なのは、どれだけ多くの意見を収集出来るか、ということだと思います。

拙著にも書いてありますが、自分の強みなんて分からないよ、という方もとにかく身近な方でもいいので、自分にどういった強みや特徴があるのか聞いてみて下さい。

そうすると自分が気づいていないことが出てくる可能性もありますし、発見が多いと思うのです。自分はそんなことは普通だと思っていたんだけど、人から見たらそこが私の魅力だったんだとか、そういうことに早くお気付きになり、そこをご自分の強みとしてストーリーを紡いでいくことが出来ると思います。

 それでも私何の強みもないです、というような方は今からでも作ることが出来ます。拙著の中でセルフPRを上手くやってらっしゃる方のことが書いてあるんですが、その中の一人で「スナック女子」と言って「スナ女」の代表的な方がいます。 この方は全国のスナック300軒に行き、スナック大好き女子と謳っているのですが、このようなことはやる気になれば出来なくはないですよね。

自分だったらどういう分野が好きで、趣味の延長で出来そうかなと探してみる。仕事だと急に制約が増えてきてしまいますが、趣味だと思えば自分のライフワークみたいな形でまずは色々なスナックに行ってみようかな、という風に思えますよね。今はソーシャルメディアも発達しており、個人の情報発信が容易になってきているので、様々な分野のスペシャリストになれるチャンスがあると思いますよ。

みなさんにストーリーを作るチャンスがあると伝えたい

 今回発売された拙著は「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」というタイトルで、あとの1割が何かは書かれてはいないんですが、私は「パッション」つまり情熱だと思っているんです。

やはりパッションがあって始めてストーリーが伝わると思いますので、ご自身がパッションを持てるものを時間をかけても探して欲しいと思います。

今は長生きする時代ですし、誰がブレイクしてもおかしくありません。アップルの世界開発者会議に特別招待された若宮正子さんは80代でプログラミングを始められたりと、勇気をいただける事例があったりしますね。いつ始めても遅くはないのです。

他の方と差別化していくこともできるかと思います。

皆と同じことをするにしても、そこに自分ならではのエッセンスを入れていくことが重要です。自分で引き出せないんだったら人から引き出してもらう。あくまで得意/不得意分野がありますので、全部自分でやるのがしんどければ周りの方に聞いて回る。

 最近で言うとみなさんコミュニティをすごく上手に作ってらっしゃいますよね。そのコミュニティで自分を応援してくれそうな人たちを仲間にして、その人たちに良い意見も悪い意見もとことんぶつけてもらうような、そう行った関係作りをしていくのが一つの手かなと思います。

みなさんにストーリーを作るチャンスがあると思っています。

みなさんにストーリーを作るチャンスがあります、と心強いエールを送って下さいました
▲みなさんにストーリーを作るチャンスがあります、と心強いエールを送って下さいました

 自分の強みを知り、それをストーリーにして周りに発信していく。自分では分からなければ周りに聞いてみる。それでも無ければ作ってしまう、という目からウロコの、けれども自分にもすぐに始められそうなストーリー作りのヒントを余すところなく教えて下さった小西さん。

著書には他にもたくさんの素敵なエピソードと共に、ストーリー作りのヒントがちりばめられていました。ビジネスパーソン必読の一冊です。

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