EdTechが教育の未来を変える。「Edvation x Summit 2019」レポート(後編)

EdTechが教育の未来を変える。「Edvation x Summit 2019」レポート(後編)
by 倉井美穂 公開日:2020/03/31 / 最終更新日:2020/03/31
新しい学びを体感!「Edvation x Summit 2019」レポート(後編)

前編ではイベントの概要やEdTechの国際的トレンドなどをお伝えしました。後編では会期中、とくに気になった講演や展示をピックアップしてお届けします。

ICT導入で生徒が変わった!

千代田区立麹町中学校を会場にして行われた講演「公教育におけるICT導入の課題と解決策」では、学校へのICT導入事例とそのメリットについて議論が交わされました。

異なる立場の4氏がICT導入の実例を語りました
▲異なる立場の4氏がICT導入の実例を語りました

麹町中学校ではAI(人工知能)型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」をはじめ、ICT導入を行なってから教室が劇的に変化したといいます。QubenaはAIを使って生徒の間違いかたを解析し一人ひとりに個別最適化した問題を出題する学習教材で、各々の理解度にあわせて学習できるというもの。Qubenaを開発した株式会社COMPASSの神野元基氏によれば、導入後、先生への質問がふえ、先生と生徒との距離がより近くなったのだとか。また、導入校である麹町中学校の工藤勇一校長いわく「生徒が個々にタブレットで学習するスタイルは一見それぞれ好き勝手にタブレットをさわっているように見えるものの、各々の進度で進められるため一斉授業にくらべてずっと集中することができる」のだそう。

株式会社COMPASS 代表取締役 神野 元基氏
▲株式会社COMPASS 代表取締役 神野 元基氏
千代田区立麹町中学校 工藤 勇一校長
▲千代田区立麹町中学校 工藤 勇一校長

つづいて、町田市小学校へのGoogle for Education導入事例が動画で紹介されました。おどろいたのは教室がとても静かで、子どもたちがタブレットを見つめて真剣に取り組んでいたことです。タブレットを通して全員が密にコミュニケーションをとっており、従来型の授業にくらべて人間関係はよくなっているのだとか。タブレット学習というと一人きりで作業するイメージでしたがそんなことはないのですね。導入を推進しているグーグル社のStuart Miller氏は「ICTをきちんと導入できたところには新しい学びが生まれます」と力強く語りました。

Google for Education アジア太平洋地域 マーケティング統括部長 Stuart Miller氏
▲Google for Education アジア太平洋地域 マーケティング統括部長 Stuart Miller氏

会場には学校関係者も多数来場していたものの本格的なICT導入はまだこれからという方も多く、講演では導入時に起きそうな問題点へのアドバイスも。それぞれ立場の異なる登壇者の皆さんが異口同音に語っていたのは「ICTを導入する目的を明確にする」ということです。「ICT機器を購入すること自体が目的ではうまくいくはずがない」と工藤校長。児童・生徒の使い方を考えるのはもちろんですが、先生にとってのメリット、たとえばタブレットの活用により教室間の移動を減らす、資料の印刷時間の短縮、また思い立った時にどこでも作業できることから残業時間を減少できるなど、先生方も使いたくなる入口があれば導入の意義を実感できるといいます。

さらに、佐賀市多久市長 / 全国ICT教育首長協議会会長 横尾俊彦氏はICT導入にあたってどうやって財源(予算)を確保するか、教育行政に対してどのように働きかけるかについてお話しくださいました。まず活用できる予算がどこかにないか探すこと、また最初のきっかけとしてA4サイズ1枚でよいのでICT導入の意義やメリットを分かりやすくまとめたものを首長や教育長にタイミングよく渡して興味を引いてもらうこと、そして麹町中学校の例のように民間企業とタッグを組むのも一案とのこと。ICTにくわしい先生がいなければICT支援員が定期的に来校してくれるよう働きかけ、先生方の不安を解消できる環境を作ることも大切です。

「ICT導入する前にまず『学校教育の役割』とは何かをもう一度考えてほしい」と語る工藤校長の言葉がとても印象的でした。

AI時代の教育とは?

もうひとつ気になった講演が、紀尾井カンファレンスセミナールームにて行われた「AIは教育に何をもたらすのか? AIテクノロジーのいまとこれから」です。AIの最新事情を知る識者4名が登壇し、学校現場の課題解決にAIテクノロジーがどのように貢献できるかを語りました。

たとえば英語教育について。2020年度から始まる英語教育改革では自分が受けてきた英語教育とは異なる指導方法であることから、対応に不安を感じている先生も少なくありません。こうした中、テクノロジーを教材に活用することで学習効果を飛躍的に伸ばせると語るのはInstitution for a Global Society (igs) CEO/Founderの福原正大氏。

AIを使った教育サービスは日々進化している、と語る4氏
▲AIを使った教育サービスは日々進化している、と語る4氏

児童・生徒が英語学習でミスしやすい場面をビッグデータ化することで4技能の習得にも活用でき、英語学習における地域格差の解消にも役立つといいます。

また、手書き文字認識などAIを使った教育サービスを展開している株式会社Cogent Labsの床鍋佳枝氏からは英語学習教材を学校に導入した際の経験談が語られました。普段の授業では集中せず、ともすれば教室の外に出ていくこともあった生徒がタブレット型教材を使って学習したところ集中して取り組み、周りからの評価が一変するほど飛躍的に学習効果が上がったのだそうです。

さらに話題は先生の働き方改革にも。教育イノベーターとしても活躍するUiPath株式会社Head of Product Marketingの原田英典氏は「学内で生じるさまざまな事務業務をAIテクノロジーで処理すれば、先生の業務を効率化でき、一番大切な仕事である子どもたちに関わる業務に集中できるはず」と語ります。テクノロジーって先生の働き方改革にも役立つのですね!

2日間の取材を経て感じたのは、ICT機器を使いこなすことだけが教育の目的ではないということ。テクノロジーを活用して子どもたちが自ら学ぶことでモチベーションを上げ、自己肯定感を高めてもらうことこそが大きな目標といえそうです。お互いの個性を認め尊敬しあえる社会を創り出すために、EdTechが今後の教育界に果たす役割は大きいのではないでしょうか。今後の教育改革の動向が楽しみになってきました。

〜取材を終えて〜
講演終了後、会場後方を通ると何やら手書きされた模造紙を発見。会場スタッフの有志の方がグラフィックレコーディング担当として講演内容を書き留めたもので、とても分かりやすくまとめられていました。登壇者だけでなく、現場スタッフの皆さんも積極的に参加して盛り上げていた「Edvation x Summit 2019」、参加者全員の活気と熱い思いが新しい時代の教育改革につながる気がしました。

似顔絵もそっくり! 講演内容がひと目で分かります
▲似顔絵もそっくり! 講演内容がひと目で分かります

「Edvation x Summit 2019」公式HPはこちら

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