あらゆる「証明」をデジタル化、ブロックチェーン証明SaaSを提供するLasTrust(ラストラスト)圷健太(あくつけんた)さんインタビュー

あらゆる「証明」をデジタル化、ブロックチェーン証明SaaSを提供するLasTrust(ラストラスト)圷健太(あくつけんた)さんインタビュー
by 戸田江里子 公開日:2020/05/23 / 最終更新日:2020/05/18
「Edvation✖️Summit 2019 」でパネリストとして登壇中の圷氏
「Edvation✖️Summit 2019 」でパネリストとして登壇中の圷氏

ビットコイン取引がきっかけで、ブロックチェーン技術って何?と興味を持った方も多いかと思います。私もその一人。ブロックチェーン技術は、ネットワーク参加によって支えられている、あらゆるものを「証明」する台帳です。
今後はさらに、学位証明書、資格情報、免許、住民票、社員証など、あらゆる「証明」を暗号技術でデジタル化して「ブロックチェーン証明書」として活用されていくことが期待されています。ブロックチェーン証明を簡単に導入できるSaaS「CloudCerts®️」(クラウドサーツ)を提供するLasTrust株式会社代表取締役の圷健太(あくつけんた)さんにお話をお伺いました。

最初の起業はタイで、動画制作会社を立ち上げ

Happyデジタル:
LasTrustを立ち上げる前は、どんなお仕事をされていたのですか? 

圷さん:
元々は動画畑の人間で7年前にタイで最初に起業して、動画マーケティングを行う会社を経営していました。タイに興味を持った理由は2
つあります。1つは学生時代にタイに旅行した際、タイのアート、デザインのセンスに魅力を感じたことです。当時私は多摩美術大学の美大生だったので、そう言ったカルチャーに興味を持ちました。2つ目はタイのマーケットです。日本人が10万人在住していて、当時はタイ現地の日本企業向けに動画制作をしている日系会社がほとんど無かったので、ブルーオーシャンだったんですね。起業してもチャンスがあると思いました。
最初は単身でタイに渡り、自己資金でエアコンもない小さなオフィスからスタートしました。事業が順調に進み、6年後には現地でスタッフも雇用することができました。現在の妻は、二人でタイで生活できると確認できた後に日本から呼ぶ計画で、なんとか1年後にタイでの夫婦生活をスタートできました。(参考:奥様は漫画家&イラストレーター! 圷さんご夫妻のタイ滞在記はこちら
タイでの事業が軌道に乗り、経営の知識や動画マーケティングのノウハウも蓄積されて、新しい挑戦をしたいと思っていた時期に、ブロックチェーン技術に出会い興味を持ちました。それが2年ぐらい前です。

ブロックチェーン証明書イメージ
ブロックチェーン証明書イメージ

ハッカソン参加が事業化のきっかけに。開発体制はボーダレス。

Happyデジタル:
ブロックチェーン事業に取り組むきっかけは?

圷さん:
2019年に行われた経済産業省主催の「ブロックチェーンハッカソン2019」への参加がきっかけでした。ハッカソンのテーマの一つが「学位・履修履歴をブロックチェーン技術でどのように担保できるか」で、そこで出会ったメンバーと現在のコアになる技術をハッカソンで発表して、賞をいただくことができました。そのメンバーの一人が、現在の弊社のC T O髙橋です。そして後に私たちの事業に賛同したデジタルハリウッド大学教授の佐藤が加わりました。ハッカソン後も引き続き開発を行い2019年8月に法人を設立、11月にはブロックチェーン 証明SaaS「CloudCerts」とデジタルバッジ管理アプリ「Skill Wallet」の特許出願を行いました。今年の2月には、CloudCertsのA P Iとして「CloudCerts Connect」をリリースして、どの企業でも利用いただくことが可能になりました。

Happyデジタル:
昨年の2月末にチームメンバーと知り合って以来1年間、とても早いスピードで製品化なさったのですね。

圷さん:
私とエンジニアの高橋が、フルタイムで従事しています。私がマーケティングや資金調達、アートディレクションを担当し、髙橋がCTO(最高技術責任者)としてエンジニアチームの統括と開発を行っています。彼は仙台在住、私は東京在住、開発チームはロシアのフルリモートチームで行っています。実はインタビューの画像のオフィス背景もバーチャルです!

Happyデジタル:
ロシアのカザン(*カザンはロシア連邦タタール共和国の首都)でのエンジニアの採用経緯も、興味深いですね。ブログで拝見しました。なぜロシアに注目なさったのですか?

圷さん:
タイでビジネスをしていた時に、現地で人材ビジネスをしている友人から、ロシアのエンジニアは優秀であること、その中でも特にカザンエンジニア教育への投資も盛んであることを聞いていました。直感的にピンときたので人材採用のために高橋とカザンに飛び、二人のエンジニアを採用しました。オフショア開発だと、東南アジアが知られていますが、カザンのエンジニアも、開発に関してストイックで、モチベーションが高く、東南アジアよりも人件費が安価であることがわかりました。髙橋の前職の企業でのプロジェクトマネージャーとしての経験やスキルもあって、優秀なエンジニアを採用できて、頼れる仲間となっています。

ロシアのカザンでの採用テストの様子、右はC T O高橋氏
ロシアのカザンでの採用テストの様子、右はC T O高橋氏

Happyデジタル:
製品化まで、とても早いスピードですね。

圷さん:
ハッカソン後も商品化へ向けてブラッシュアップを続けました。法人登記が完了してからCloudCertsをローンチ(サービス提供開始)するまでに1〜2ヶ月ほど時間がかかりました。

Happyデジタル:
それでも早い!

圷さん:
今でも開発のブラッシュアップは、アジャイル開発で続けています。

ブロックチェーン・デジタルバッジで個人の価値を可視化に

Happyデジタル:
御社の開発した製品、ブロックチェーン発行証明書「CloudCerts®︎(クラウドサーツ)」について、お聞かせください。

圷さん:
CloudCertsは、学位証明書や学習履歴(スタディログ)を改ざんできない形で簡単にデジタル化できます。用途はそれだけでなく、契約書、社員証、あるいは議事録や資格証明でも同じデータですので、種類は関係なくブロックチェーンのお墨付きがついた偽造不可能な電子証明を付与、電子署名をつけた形でできます。
海外では学位の証明書が簡単に偽造されているという現状があります。しかしブロックチェーン化することで、改ざんを防ぐことができますし、学校などがサービスを停止しても、ブロックチェーンネットワーク自体が停止しない限り、証明書の確かさを担保しておけます。

Happyデジタル:
CloudCertsが優れている点を教えてください。

圷さん:
まず扱いやすい点が挙げられます。当社はA P Iでサービスを提供していて、ユーザー側がC S Vデータやエクセルファイルを投げることで、証明書をすぐに発行することができます。
さらに発行された証明書の確かさを誰もが簡単に検証できるので、個人のスキルや学んだ実績の可視化が可能となって、ジョブマッチングの効率化にもつながります。具体的には、学んだ実績の蓄積をポートフォリオとしてまとめ、採用担当者に情報を共有しやすくなったり、あるいは自分に適した学習プログラムを受けやすくなることが期待できます。

Happyデジタル:
採用や、人材配置にも効果的なのですね。

圷さん:
はい。さらにその先にもっと幅広く実績を可視化できる仕組み、証明書を直感的に貯めていけるインターフェースが必要だと考えています。この仕組みがSkill Walletです。それによって今まで見えなかった価値が見えるようになります。
例えばAさん著名大学卒で大手企業勤務、Bさん大学中退フリーランス、Cさんが高校卒業地元の商店街の金物屋という人がいる場合、これだけだとAさんが学習履歴な豊富なように見えます。
しかしBさんは著名なOSSの開発者でQiita(キータ*エンジニアの知識共有サイト)のフォロワーが3万人、Cさんは包丁の専門家で、メーカ、料亭から信頼されている、といった従来見えていなかった価値が見えるようになります。
実は私は学生時代に、企業主催のデザインコンペに応募して賞をいただいたり、文章を書くのが好きで受賞した作品が出版化されたこともあります。小説を発表した履歴も出版社から発行されたブロックチェーンバッジがあれば、今回のようなインタビューの前に共有することで、より自分をわかってもらうことにつながると思います。

ブロックチェーン証明書で目指す新しい世界観
ブロックチェーン証明書で目指す新しい世界観

Happyデジタル:
今までは、自分で作成したポートフォリオを公開する人が多いかと思いますが、自己申告ではなくで、客観的な証明になりますね。

圷さん:
オフィシャルな履歴をSkill Walletに蓄積させることで、信頼性が高まります。バッジに埋め込まれたスコアによってレーダーチャートとして自分のスキルを見える化すれば、スキルアップの指標にもなりますし、採用においても企業側が希望するレーダーチャートの形にマッチする人材をソートすることでジョブマッチできるようになります。ブロックチェーン で見えていなかった信用の可視化が可能になります。

Happyデジタル:
海外では既にブロックチェーン証明書は導入されているのですか?

圷さん:
ブロックチェーン証明書自体は、M I T、ハーバード大学、バーレーン大学など世界中の教育機関が導入しています。今後オンライン面接などが普及していく中、紙の証明書ではなく、ブロックチェーン担保のあるデータが重要になってきます。ブロックチェーン証明書には世界標準規格Blockcertsがあり、弊社も規格に準拠しています。Blockcertsはもともと、MIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業した複数のエンジニアが提唱・開発した規格です。最初のコンセプトデザインはMITのMedia LabとLearning Machine社が共同開発しました。

Happyデジタル:
なるほど。ブロックチェーンへの取り組みは他社もされているかと思いますが、製品化のスピードがとても速い!特許も取得されています。ファーストペンギン(一番手)ですか?

圷さん:
はい!そうなんです。
最近、ビジネスブレイクスルー大学(BBT)にも卒業証明書を採用いただくことになりました。実用では国内初です。オンライン授業の教育機関ですので、元々紙の修了証書を発行することに違和感は感じておられたようです。実際に問い合わせをいただいて発行まで2週間でブロックチェーン修了証書を発行できました。

インタビューはオンラインで開催。画面上の圷さん
(リアル感のある背景オフィスはバーチャル画像とのこと)
インタビューはオンラインで開催。画面上の圷さん
(リアル感のある背景オフィスはバーチャル画像とのこと)

Happyデジタル:
活用シーンが、一層広がっていきますね。今後の展開をお聞かせください。

圷さん:
「CloudCerts Connect」は、ブロックチェーン技術の知見を必要とせずに、どのような企業でもA P Iで簡単にブロックチェーン証明書の導入・発行を可能にします。普及によって社員証、証明書、契約書などの書類を関係者間で共有することが、広がっていくと思います。例えば遺言書、在留カード、決算書など改ざんができなくなり、証明に使っていただけると思います。

Happyデジタル:
ブロックチェーンの普及で、職を失う人も出てきそうですが、今回コロナの状況下で、変化の大きな転機となるのではないでしょうか。

圷さん:
今回、EdTechも認知されるきっかけになったと思います。オンラインのメリットが評価されるようになりました、
Happyデジタル:
なし崩し的に教育やビジネスにおいて、オンライン活用が広がっていきました。

圷さん:
オンラインが普及していく中、画面の向こう側で相対する人間の信頼性担保も必要となるので、それをブロックチェーン技術が下支えすることになると思います。

Happyデジタル:
ブロックチェーンの普及で新しい前向きな世界が広がっていきそうです。国内外を繋いだリモートワークなど御社のビジネスも新しいスタイルかと。例えば営業なども、「足で稼ぐ!」オールドスタイルではないですよね(笑)。

圷さん:
はい。実際にお客様と対面することも大事かと思いますが、現在のコロナ禍ではそれも難しいため、フィールドセールスは極力少なくし、インサイドセールスに注力しています。Webマーケティングに自信のある方がいれば積極的に採用していきます。

Happyデジタル:
今後の取り組みに期待しています。ありがとうございました。

株式会社LasTrustホームページ

取材を終えて:
ブロックチェーン技術の活用、実用シーンについて、とてもわかりやすくお話をいただきました。一般的に新しい技術のリリース時期は、ユーザービリティが後回しになりがち。そんな中、LasTrust社の製品は、高い技術力に加えて、圷さんの国内外でのビジネス経験、感性を軸にしたビジネスデザインのセンスが光っていると感じました。「HappyデジタルAcademy」でも同社のブロックチェーン証明書を導入予定です。

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